対人恐怖症(社会不安障害)とは?主な症状や原因・克服法を簡単に解説
「人と接するときに緊張でうまく話せない…」「人前で電話をするのが怖い…」
そんな悩みを抱えているなら、対人恐怖症の可能性があるかもしれません。
対人恐怖症は精神疾患のひとつで、症状によって人との交流や仕事への影響が出ることがあります。
この記事では、対人恐怖症の症状や原因、克服法について詳しく解説します。
対人恐怖症とは
対人恐怖症に悩む人は多く、自分が気づかないうちに発症しているケースがあります。
どのような病気なのかチェックしてみましょう。
対人恐怖症ってどんな病気?
対人恐怖症は、他人が自分のことをどう思っているかを過剰に気にして、他人と交流するときや人前で何かをするときに不安や恐怖を感じる病気です。
対人恐怖症は社会不安障害(社交不安症・社交不安障害)ともいわれ、極度の不安や恐怖を感じることや、不安や緊張を感じそうな状況を避ける回避行動によって日常生活に支障が出ている状態です。
対人恐怖症は以下のようなタイプがあります。
- 対人緊張:他人の存在を意識しすぎて、人前に出ると極度に緊張したり苦痛を感じたりする。
- 赤面恐怖:注目されると緊張して顔が赤くなる。
- 電話恐怖:人前だと緊張して、電話をとったりかけたりするのが怖い。
- 会食恐怖:食べているところを見られることに緊張して、人前で食事をするときに恐怖を感じる。
- 視線恐怖:周囲からの視線が怖い。または、自分の視線が他人に不快感を与えるのではないかと不安に感じる。(自己視線恐怖)
- 書痙(しょけい):人前で字を書くときに緊張して、手が震えてうまく字が書けなくなる。
知恵袋に悩みを投稿する人多数
「Yahoo!知恵袋」では、対人恐怖症についてのさまざまな悩みが投稿されています。
対人恐怖症に悩んでいる人は国内で約300万人以上いるといわれており、とても身近な病気です。
10代半ば〜20代前半の頃に発症し始め、日常生活に影響が出て病院を受診するようになるのは20代~30代の頃が多いといわれています。
特に、男性より女性が発症しやすく、就職や結婚・出産・ママ友同士の付き合いなど、社会生活の中で苦痛を感じる機会が多くなるのが要因となるようです。
対人恐怖症を発症していても、ただの性格の問題と思い込んでいるケースがあり、家族や周囲の人から理解されずに長い間苦痛を感じている場合もあります。
そのため、なかなか自分の周りにいる人には悩みを相談できずに、知恵袋に投稿する人が多いのかもしれませんね。
対人恐怖症以外にも、広場恐怖症や醜形恐怖症、強迫性障害や妄想性障害など、さまざまな症状で悩む人が知恵袋を利用しています。
対人恐怖症の主な症状
対人恐怖症を発症すると、身体的な症状と精神的な症状が現れます。
それぞれの症状について解説します。
身体に現れる症状
対人恐怖症の人には、以下のような症状が身体に現れることがあります。
- 発汗
- 動悸
- 手足の震え
- 赤面
- 腹部の不快感
- 息苦しさ
対人恐怖症に起こる身体症状はパニック障害の発作に似ています。
しかし、パニック障害の症状は理由がない状況で起こり、対人恐怖症の症状は他人からどう見られているか気にしたときに起こるのが特徴の違いです。
精神的な症状
人と交流したり人前で何かをしたりするとき、強い不安や恐怖感を感じるのが対人恐怖症の精神的症状です。
また、自分が不安になっていることを、他人に気付かれるのが怖いと感じるのも症状のひとつとされています。
対人恐怖症を発症する原因は?
対人恐怖症を発症する原因ははっきりと解明していませんが、研究によっていくつかの原因が考えられています。
それぞれの説について解説します。
脳内の神経伝達物質の乱れ
脳内には約140億個の神経細胞があり、神経伝達物質が神経細胞を制御することで脳の機能は調節されているのです。
対人恐怖症は、神経伝達物質のバランスが乱れることが発症の原因とされています。
特に、精神を安定させる作用がある「セロトニン」という神経伝達物質の量の低下が、対人恐怖症の発症に関係していると考えられています。
脳内の扁桃体が過剰に反応している
脳の中には扁桃体という部位があり、不安や恐怖感、緊張などの感情や情動に関わる重要な役割を持っています。
この扁桃体の活動が活発になると、不安や恐怖を強く感じたり、交感神経が優位になって身体的症状が現れたりするという説があります。
また、扁桃体は記憶にも関わっていて、不安や緊張を感じたときと似た状況になると症状が現れると考えられているようです。
育った環境や性格が一因になっている
対人恐怖症は、小さい頃に親に厳しく叱られることが多かったなど、これまで育った環境が関わっている場合があります。
授業中に先生に当てられたときに緊張して声が出なかったなど、失敗した体験が発症の引き金になっているケースも。
また、もともとの性格が一因となっていることがあり、以下のような性格的傾向がある人は対人恐怖症になりやすいといわれています。
- 心配性
- 完璧主義
- 真面目
- 責任感が強い
- 人と交流するのが苦手
- 神経質
遺伝的要因
対人恐怖症は親も不安や緊張を感じやすいなど、遺伝的要因が関わっていると考えられています。
ただし、遺伝的要素による症例は少なく、遺伝よりも育った環境の方が関わりが大きいとされています。
人前で緊張しない方法は?対人恐怖症の克服法
人前で緊張してしまうときは、日常生活の中でできる対策をしてみましょう。
対人恐怖症の克服法について解説します。
規則正しい生活を心がける
対人恐怖症は、神経伝達物質「セロトニン」の量が低下している状態です。
セロトニンは、感情のコントロールや精神の安定、ストレスに対して効果のある物質であり、不足すると精神障害の原因になりうるともいわれています。
セロトニンを増やすには、以下のような方法があります。
- 起床して30分以内に日光を浴びる(1日15〜30分程度)
- 習慣的に運動をする(ランニング・サイクリングなどの一定のリズムを刻む運動がおすすめ)
- 栄養バランスの良い食事をとる
- しっかりと睡眠をとって休む
これらの方法を実践するには、規則正しい生活を心がけることが大切です。
鏡の前で笑顔の練習をする
不安や緊張を感じると、表情がこわばって相手に緊張感が伝わってしまいます。
そうすると、相手も緊張してコミュニケーションが取りづらくなり、ますます不安や恐怖を感じやすい空気になってしまうことも。
まずは、人と接するときに自然と笑えるように、鏡を見ながら笑顔の練習をしてみましょう。
家だけでなく、鏡を持ち歩いてトイレに行ったときなどに練習するのもおすすめです。
人と話すのはとても楽しいことだと想像しながら、イメージトレーニングしてみてくださいね。
自分から挨拶をする
人と出会ったときは、自分から大きな声で挨拶してみましょう。
自分から相手に話しかけることで、リラックスした雰囲気を作りやすくなります。
笑顔で挨拶したあとは、以下の点を参考に楽しく会話を楽しんでみましょう。
- 自分の体と顔を相手にまっすぐ向ける
- 相手の目を見る
- 相手が話しているときはうなづいたり相槌を打ったりする
- 親しみを込めて相手の名前を呼ぶように意識する
緊張したときは筋弛緩法と腹式呼吸
緊張したときは、筋弛緩法と腹式呼吸を試してみましょう。
「筋弛緩法」は筋肉を緊張させて緩めるリラックス法で、イライラ、不安感、気分の落ち込みなどの解消につながります。
また、睡眠の質の改善、血流促進、緊張型頭痛の緩和などの効果も期待できます。
【筋弛緩法のやり方】
- 顔・手・肩・背中など、特定の部位にギューっと力を入れた状態をキープする(10秒程度)
- スーっと力を抜いて脱力感を感じる(15〜20秒程度)
最後に、腹式呼吸でゆっくりと息を吸い込み、ゆっくりと息を吐いて心身ともにリラックスさせましょう。
アロマの香りも効果的
アロマテラピーで使われる精油は、使用する種類によって心身にさまざまな作用をもたらします。
心身のリラックスを促す作用が期待できるものもあるため、緊張や不安を感じるときは香りを嗅いで気持ちを落ち着かせるのが効果的です。
【リラックスしたいときにおすすめの精油】
- ラベンダー
- ローズウッド
緊張をほぐしたいときは、自分の好きな香りを選ぶのもポイントです。
自分がリラックスできる香りを探してみましょう。
日常生活に支障をきたす場合は病院へ
対人恐怖症は治療が可能な精神疾患ですので、日常生活に支障をきたしている場合は精神科または心療内科を受診し、精神科医に相談しましょう。
対人恐怖症の主な治療法は、認知行動療法という治療技法による心理療法と、抗うつ薬(SSRI)・抗不安薬・β遮断薬などを使用した薬物療法です。
2つの治療法を併用する場合もあり、治療者が患者を診断して適切な治療を判断します。
性格上の問題だと思って放置する人もいますが、症状が慢性化したりうつ病を併発したりする場合もあるので注意しましょう。
日常生活の工夫が症状緩和につながりますよ!
対人恐怖症は生活習慣の見直しやリラックスすることを心がけることで症状緩和につながる場合があります。
自分の緊張しやすい場面になったら、ぜひ今回紹介した克服法を試してみてくださいね。
ただし、症状によって苦痛を感じていて、社会生活に影響が出ている場合は適切な治療を行うのがおすすめです。
他の病気の可能性もあるので、自己判断せずに早めに病院を受診しましょう。
対人恐怖症を克服できれば、仕事や人間関係・恋愛においてもより充実した日々を送ることができますよ。