同性パートナーシップ制度とは?正しい知識をつけて日本の未来に期待しよう
同性同士で結婚したい場合、現在の日本でもっとも近い制度は「同性パートナーシップ制度」です。
しかし、従来の法律婚とは異なる部分も多く、どのような利点や効果があるのかをまず知ることが大切だといえるでしょう。
そこで今回の記事では「同性パートナーシップ制度」の内容やメリット・デメリットについて詳しく解説していきます。
Contents
「同性パートナーシップ制度」の正しい意味とは?
「同性パートナーシップ制度」とは、同性同士のカップルが婚姻と同等の権利を持てるよう自治体による承認を受ける制度です。
同性パートナーシップ制度が適用されると、病院で家族として説明を受けることや同意書へのサインが可能になったり、公営住宅への入居ができるようになったりします。
申請すると自治体より「受理証明書」が発行されますが、あくまで一定の効力が期待できるにとどまり、法的な拘束力はありません。
日本で最初にこの制度を採用したのは、東京都の渋谷区と世田谷区。
現在は札幌市やさいたま市など全国の自治体に拡充されており、今後もさらに増えていく予定です。
例:東京都渋谷区
2015年11月に日本で初めて「同性パートナーシップ制度」を導入した自治体の1つが渋谷区です。
渋谷区の制度の特徴は以下のとおりです。
- 条例として規定されている
- 渋谷区に在住の20歳以上、配偶者や他のパートナーがいない人が対象
- 費用は6~8万円
- 申請には、公正証書2種類・戸籍謄本・本人確認できるものが必要
- 申請より1週間程度で受領証明書が交付される
渋谷区の場合は「任意後見契約書」と「準婚姻契約書」という2種類の公正証書の提出が必要であり、議会への承認が必要なためプロセスとしてはややハードルが高いです。
現に他の自治体では宣誓書のみで申請できる制度もあり、導入のしやすさからこちらのタイプが普及しています。
しかし、渋谷区のタイプは地域内では法律とほぼ同等の効果を発揮する「条例」案件ゆえに、他の自治体よりも効力は強いといえるでしょう。
SDGsでも取り組まれている
世界で取り組むべき課題であるSDGs(持続可能な開発目標)には17の項目が存在します。
その中にはジェンダーや性的少数者差別の問題も含まれており、LGBTの権利も当然守られるべきものとされています。
しかし、世界の中には「同性愛者」だというだけで投獄、死刑等の重い刑罰が科される国もいまだに存在します。
令和の日本においても、同性カップルに対する差別やハラスメント行為は完全に払拭されているとはいえません。
性的少数者の人権を守りいわれなき差別をなくすためにも、同性同士のカップルを家族の構成員として認める「同性パートナーシップ制度」は、SDGsの中でも非常に重要な役割を果たすものといえるでしょう。
同性パートナーシップ制度と似た制度との違い
同性パートナーシップ制度と似た制度に「事実婚」と「同性婚」が存在します。
ここではこの2つとの違いについて見ていきましょう。
事実婚との違い
事実婚とは、入籍はしていないものの長期間の共同生活実績があるなど、実質的には夫婦関係として認められる状態を意味します。
事実婚として認められれば、法律婚とほぼ同じような権利や義務が発生します。
そのため、同性パートナーシップ制度よりも更に強い法的な拘束力をもつといえます。
ただし法律婚に認められている「配偶者控除」等の各種控除は受けることはできません。
ちなみにこれまで事実婚は男性・女性のカップルを想定した制度でしたが、2021年3月に同性同士の事実婚を認める判決が最高裁で出されました。
各事例や自治体によっても差があるため、事実婚の方が有利とは一概にはいえませんが、今後は同性同士の事実婚を認める動きがより活発になるかもしれません。
同性婚との違い
同性婚は対象が同性同士の法律婚です。
同性婚が法的にみとめられれば、男女の法律婚と同等の権利を得ることができるでしょう。
世界でもオランダやベルギー、スペインなどいくつかの国で同性婚が可能です。
しかし、現在の日本では同性婚は認められていません。
同性パートナーシップ制度はあくまで自治体における制度であり、法律婚のような法的拘束力はありません。
そのため、同性婚と同性パートナーシップ制度は別物と考えたほうがよいでしょう。
パートナーシップ制度を利用するメリット&デメリット
人生を共にしたい同性のパートナーがいる場合、パートナーシップ制度に興味をもっている人も多いですよね。
しかし、実際に申請する前に「同性パートナーシップ制度」を利用することによるメリットやデメリットを知っておくことも大切でしょう。
それらを踏まえた上で、パートナーとよく相談することがおすすめです。
メリット
法的な拘束力がないとはいえ、パートナーシップ制度は自治体が認めたルールです。
ゆえに、民間会社や病院は申し出があれば法律婚カップルと同等の扱いを行う努力を課されるということになります。
パートナーシップ制度利用による具体的なメリットは以下のとおりです。
- 生命保険契約の受取人として認められる
- 家族として公営住宅に申し込みできる
- 賃貸契約の際、家族として申請できる
- 病院での面会、同意書への記入が可能になる
- クレジットカードの家族カードの発行が可能になる
- 携帯電話の家族割が適用される
- 航空会社(ANA・JAL)では、マイレージも家族として合算可能
パートナーシップ制度の適用された自治体に限られるものの、家族を対象とした法人サービスや公的制度が受けやすくなります。
ただし、繰り返しになりますが法的な拘束力はないため、適用範囲はその自治体や会社によって異なるという点には注意が必要です。
また、入院や介護等、万が一の事態に備えてよりしっかりとした備えが欲しい場合は「任意後見契約」を結ぶという方法もあります。
任意後見契約は自治体に関係なく法的効果を発揮するものです。
同性パートナーシップ制度のない自治体に在住のカップルや、より安定した法的根拠が必要な場合は任意後見契約の締結を考えてもよいでしょう。
デメリット
同性パートナーシップ制度のもっとも大きなデメリットは、せっかく申請しても適用範囲が狭いという点でしょう。
- 遺族年金の受け取りができない
- 配偶者控除は適用されない
- 遺産を遺すのは難しい(※任意後見契約・遺言公正証書等の手続きが必要)
以上のような、法律婚であれば当たり前の権利が同性パートナーシップ制度では認められていません。
そのため、法律婚と同等の権利を求めるカップルには不満の多い制度ともいえます。
そもそも、同性パートナーシップ制度のない自治体では申立て自体ができない点も問題です。
また、関係のない人に根掘り葉掘り聞かれる、関係が公になるなど、パートナーシップ制度を利用することで受けるであろう精神的デメリットも無視できません。
とはいえ、求める人がいる以上、当事者に寄り添った形の「同性パートナーシップ制度」の拡大、あるいは同性婚のような法整備が推進されることがこれからの未来に必要なのではないでしょうか。
札幌・大阪・福岡…と全国で広がるパートナーシップ制度
日本では2015年よりはじまった「同性パートナーシップ制度」。
2021年1月時点では74自治体にまで拡充し、今後も導入する自治体は増えていくでしょう。
ただし、各自治体によって制度内容や宣誓証明書の発行までにかかる期間は異なるため、適用範囲や申請方法をよくチェックしておくことをおすすめします。
パートナーシップ制度の宣誓方法
同性パートナーシップ制度の宣言方法や申請の仕方は各自治体によって異なります。
ここでは、一例として大阪市の「パートナーシップ宣誓証明制度」を紹介します。
- 申立人は宣誓する3開庁日前までに予約を行う
- パートナーシップ宣誓書・確認書・他必要書類を提出する
- 大阪市より「宣誓書受領証」が発行される
片方、もしくは両方が大阪市在住である成人であれば、パートナーシップ制度の申請が可能です。
大阪市ではプライバシー保護のため予約制を採用しており、申請できるのは1日につき4組までとされています。
特定の宣誓日を希望する場合は、できるだけ早めに予約した方がよいでしょう。
パートナーシップ制度に賛同する企業・自治体が増加傾向にある!自由な日本の未来に期待しよう!
最初は2自治体だけであった「同性パートナーシップ制度」ですが、現在は全国に広がっています。
それに伴い、制度に賛同する企業や自治体も徐々に増えてきました。
今はまだ不十分な部分もありますが、当事者や支援者の声でより充実した制度になっていくのは間違いないでしょう。
さまざまな家族、繋がりが受け入れられる社会こそが、どんな人にとっても暮らしやすい世界であることは間違いありません。
同性同士でも異性同士でも、当たり前に権利を享受できる未来が早く近づくと良いですよね!
- 「同性パートナーシップ制度」とは、同性同士のカップルが法律婚と同じような権利を受けられることを目指すための制度
- 日本で同性パートナーシップ制度を初めて導入したのは、東京都渋谷区と世田谷区
- 同性パートナーシップ制度には法律婚のような法的拘束力はない
- 同性パートナーシップ制度を利用すれば、病院での面会や家族割サービスなどが受けやすくなる