夫婦別姓のメリット・デメリットとは?夫婦同姓なのは世界で日本だけだった
地方議会より「選択制夫婦別姓」制度を求める意見書が提出されるなど、近年ますます注目されている「夫婦別姓問題」。
現在の日本では「夫婦同姓」が基本であることから、これまでの苗字を使い続けたい人たちにとっては悩みの種のひとつです。
今回の記事では、そんな夫婦別姓のメリットやデメリットについて解説していきます。
Contents
海外では夫婦別姓が普通?夫婦同姓は世界で日本だけ
日本で婚姻関係を結んだ場合、どちらかの姓に統一する必要があります。
これは民法750条でそのように定められているためです。
これまでは「そういうものだから」と、夫婦同姓とすることに疑問を持たなかった人も多いでしょう。
しかし、実はこの夫婦同姓を法律で定めているのは日本のみ。
他国では別姓・同姓は自由に選べたり、あるいは結合姓など選択肢は多様です。
日本のように「必ず夫婦同姓」を規定されることはありません。
アメリカではすでに1970年代に、ドイツでは1993年に夫婦別姓が認められています。
日本の国会議員の中でも「選択制夫婦別姓」については賛成派・反対派と意見が分かれているようですが、国際社会に遅れをとらないためにも、より具体的な法改正や法制化に向けた話し合いが必要なのではないでしょうか。
多様性を認めようという動きがスタンダードとなりつつある昨今、日本もそろそろ「姓」の選択肢を増やすべき時期なのかもしれません。
夫婦別姓のメリット5選!
夫婦のどちらかがこれまでの姓を捨てなければならないというのは、精神的にも実務的にもかなりの負担を感じるという人も少なくありません。
ここでは、夫婦別姓を選択した際のメリットを見ていきましょう。
ちなみに現在の日本では完全な夫婦別姓は不可能ですが、氏を変更したくない場合、事実婚あるいは通称として旧姓を利用する方法が一般的です。
戸籍上の「氏」の変更手続きがいらなくなる
法律婚で苗字が変わる場合、住民票や銀行、運転免許証やクレジットカードなど、膨大な数の名義変更手続きが必要です。
結婚は二人の問題であるにも関わらず、苗字が変わる方に大きな負担をかけることになります。
もし夫婦別姓を選択すれば、こうした煩雑な作業は一切不要です。
「氏」の変更手続きがいらなくなるというのは、かなりの負担軽減につながるでしょう。
仕事で使用する論文等で著者の一貫性を保つことができる
仕事上で自分の名前を出している場合、苗字が変わってしまうというのはなかなか面倒です。
とくに論文等を発表している立場の場合、苗字が変わったせいで同じ著者かどうかの証明が難しいという問題があります。
夫婦別姓を選択すれば著者の一貫性を保つことが可能です。
そうすれば、せっかく実績があるにもかかわらず、キャリアが断たれるかもしれないリスクを回避することができるのです。
旧姓のままでいられる
生まれてから何十年も慣れ親しんできた自分の苗字。
結婚によって急に変わってしまうのは、かなりの違和感を覚える人もいるでしょう。
両親や実家との縁を否定されたような気持ちにもなるため、できれば自分の苗字は変えたくないという人も少なくありません。
アイデンティティのひとつでもある苗字を捨てなくて済むのは、夫婦別姓の大きなメリットです。
個人情報が保護される
結婚して氏が変わってしまうと、勤め先の企業や取引先への申請も必要です。
そのため、どうしても周囲の人に結婚したことが知られてしまいます。
人によってはいちいち結婚したことを周りに知られたくないという場合もあるでしょう。
夫婦別姓であれば、そうした個人情報を保護することができます。
また、万が一離婚したとしても周囲にはわからないので気楽です。
結婚のハードルが下がる
苗字の変更やそれにともなう事務作業が嫌で、結婚に二の足を踏んでしまうという人は案外多いものです。
しかし夫婦別姓を選択すれば、そうした気持ちの障壁や煩雑な作業から開放されるため結婚へのハードルが下がるでしょう。
片方に負担がかかることなく結婚できるのは、未婚の男性女性にとって大きなメリットです。
知っておきたい!夫婦別姓のデメリット
現在の日本では法律婚での夫婦別姓はできないため、苗字を変えたくないカップルは事実婚を選択することになります。
もし夫婦別姓を選択したらどのようなデメリットがあるのか解説していきます。
両親のどちらか一方が子供と「氏」が異なってしまう
夫婦別姓を選択した場合、問題となってくるのが子どもの姓です。
両親どちらかの姓を選ぶことになるため、家庭内で苗字がバラバラになることは避けられません。
そうした家族の形が一般化すれば問題ないのですが、少数派の今は子ども自身が気にしたり周囲から心無い言葉をかけられるリスクが少なからずあるといえます。
周囲の目が気になる人もいる
夫婦別姓にするために「事実婚」を選んだ場合、周囲から色眼鏡で見られる可能性もあります。
とくに親世代などは法律婚以外の結婚を「いいかげんなもの」と捉える傾向があり、「夫婦別姓にしたいから」と説明してもなかなか理解を得られないかもしれません。
そうした周囲の目が気になってしまう人にとっては、夫婦別姓の選択がストレスになってしまうでしょう。
法律上結婚が認められていない
繰り返しになりますが、今の日本では法律婚での夫婦別姓は認められていません。
そのため、内縁関係とみなされ、法律婚では当然受けられるであろう公的支援や補助からは取りこぼされることになります。
また、子供が生まれても認知なしでは父親として認められないなど、法律婚より親権や相続に関してもさまざまな手間がかかるのは事実です。
ホテルや飛行機の予約名でトラブルが発生することも
通称と戸籍の苗字が異なっていることで、ホテルや飛行機の予約の際にトラブルが発生する可能性があります。
たとえば第三者が通称でうっかり予約してしまった場合、本人が同一人物であることを証明するのは困難になってしまいます。
パスポートや身分証明書の名前は戸籍上の苗字ゆえに、普段使っている名前とのすれ違いが起こる可能性は常にあるといえるでしょう。
家族という認識がしづらい可能性
これまでの日本では夫と妻の姓は同じというのが一般的でした。
ゆえに、家族でありながらバラバラの姓という状態は「同じ家族の一員」という認識が薄らいでしまう可能性があります。
家族としての一体感を重要視する人にとっては、姓が異なることに違和感を覚えてしまうかもしれません。
夫婦別姓問題を解消し、誰もが自分らしくいきられる社会に!
女性のキャリア保護の観点や手続きの煩雑さの解消から、夫婦別姓を認めてほしいという声は増えてきています。
しかし一方で、家族間での名字の違いが「家族らしさ」を奪うのではないか、という危惧をもつ人も少なくありません。
私たちが理解すべきは、結婚したら同じ姓がいいという主張と別姓がいいという主張は対立するものではないということ。
姓の変更は個人のアイデンティティにも関わる問題であり、望む人がいるのであれば「夫婦別姓」も選択肢のひとつとするのが自然な流れといえるでしょう。
また同時に「家族は同じ姓がいい」という人の希望も守られるべきものです。
どちらかがダメということではなく、誰もが自分らしく生きられる社会のために選択肢を増やすことが、これからの我々の課題なのかもしれません。
- 法律で夫婦同姓が定められているのは日本だけ。他国では夫婦別姓や結合姓などの選択肢がある
- 夫婦別姓には配偶者にとって面倒な「氏」変更の手続きが不要、キャリアが継続しやすいなどのメリットがある
- 子供と親の姓が異なってしまう、本人確認が難しいなど夫婦別姓にはデメリットも存在する
- 夫婦別姓問題が解消すれば、より自分らしく生きられる社会の実現につながる