適宜とはどんな意味?正しい使い方や適時との違い、ビジネスでの注意点を解説
取引先のメールや社員同士のチャットなど、「適宜」は日常生活やビジネスシーンでよく見かける言葉です。
しかし何気なく使ってはいるものの、本当に正しく使えているかどうか自信がないという人もいるのではないでしょうか。
そこで今回の記事では「適宜」の意味や使い方・ビジネスでの注意点を解説していきます。
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「適宜(てきぎ)」の意味とは?
「適宜」とは、「その場の状況によって判断・対応すること」や「各々で状況に合わせて判断すること」「状況に適していること」などを意味する言葉です。
ビジネスにおいては、相手の裁量や柔軟性に任せたいときに使われることが多く、やや具体性に欠ける指示だと感じる人もいるかもしれません。
一方、相手の裁量にある程度任せることで自由な判断や臨機応変な対応がしやすくなるというメリットもあります。
「適宜」を使用するときは、相手とのすれ違いが起きないよう気になる部分は確認をとることも必要です。
また、使用するシーンとしては上司→部下、同僚同士などが一般的であり、目上の相手に対しては「適宜対応していただけるとありがたいです」のように敬語表現をプラスしたほうが無難です。
「適宜」の類義語
「適宜」にはいくつかの類義語が存在します。
しかし、それぞれの語句でニュアンスが異なるため、その場に応じて使い分けることが大切です。
【適切】
適切とは、状況や目的に合ったふさわしい状態を意味します。
適宜の場合は状況の変化に合わせていく意味合いが強いですが、適切は個人の裁量よりも一定のルールや手続きに合わせた正しい対応を意味するといえるでしょう。
【適正】
適正とは、まさに正しいこと・正当であることを意味します。
手続きや運用面だけでなく、道徳・倫理的観点からの正しさまで含むことが多いです。
【相応/ふさわしい】
相応・ふさわしいは、どちらも釣り合っていること、適当であることを意味します。
その場に合った適切な行動や対応という意味では「適宜」に近いですが、状況の変化に合わせた柔軟さといったニュアンスまでは含まれないため注意が必要です。
「適宜」の使い方
続いて「適宜」の意味に合わせた2つの使い方を見ていきましょう。
「状況に応じる」という意味での使い方
「適宜」には状況に応じるという意味があります。
例えば、現場で柔軟に判断してもらいたい場合、状況が変化したときに臨機応変に対処してほしい場合などに使われます。
- 夏休みは各店舗ごとで適宜判断してほしい
- イベントは基本的に3時までだが、状況によっては適宜変更できる
など、その場の条件や状況に応じてさまざまな対応をしてほしいときに使うことが可能です。
「各自の判断」といった意味での使い方
「適宜」には各自の判断でといった意味もあります。
各々の判断で行動してほしいとき、あるいは個人の判断に任せたいときなどに使用します。
- 昼休憩は各自交代で適宜とってください
- プロジェクトの進行具合について、適宜報告してほしい
- 必要な備品は適宜購入してよい
ビジネスシーンにおいては、個人の判断で対応せざるをえない場面も少なくありません。
わざわざ上司の判断をあおぐまでもなく…という部分では「適宜対応」とされることも多いでしょう。
「適時」「随時」「必要に応じて」との違い
では、他にもビジネスシーンでよくみかける「適時」「随時」「必要に応じて」といった言葉は「適宜」とどのような違いがあるのでしょうか。
適切に使い分けるためにも、それぞれの差異についてぜひチェックしておきましょう。
「適時」と「適宜」の違い
「適時」は適切な時、英語の「タイムリー」に当たる言葉です。
適宜が状況やその場の条件などに合わせた「適切な行動」を意味するのに対し、適時はあくまで時間のみに焦点を合わせています。
ゆえにタイミングや適切な頃合いについてのみ言及したい場合は、「適時」を使うのがベターです。
「随時」と「適宜」の違い
「随時」は成り行きに応じて、好きなとき・必要なときにといった意味を表します。
タイミングについてという点では「適時」と同じですが、タイムリーというよりはもっと曖昧で臨機応変なニュアンスが強いです。
「適宜」も臨機応変な対応を意味しますが、「随時」の場合はその中でもタイミング・時間についてフォーカスされた言葉といえます。
「必要に応じて」と「適宜」の違い
「必要に応じて」と「適宜」は非常に近いニュアンスを感じるかもしれません。
どちらも状況に応じた行動を表す言葉であり、一見同じ意味のように思えるからです。
「必要に応じて対応いたします」
「適宜対応いたします」
この場合、「必要に応じて」のほうがより強く行動を促すニュアンスを含んでいます。
相手がやってほしいとなったら、必ず対応しなければならないのが「必要に応じて」であり、相手が求めても必要性がなければやらない可能性も含むのが「適宜」です。
ゆえに、ケースバイケースで対応が異なるのか、それとも必ず対応すべきなのかによってそれぞれの言葉を使い分けるのがおすすめです。
【適宜】ビジネスシーンでの例文や注意点
最後に、「適宜」の具体的な使い方や注意点を例文とともに見ていきましょう。
「適宜」を使った例文
①進捗状況については、適宜お知らせください
必ずしもすべての進捗を報告する必要はないが、ある程度の裁量で適切な報告が欲しいことを表しています。
②16時閉店ですが、事前連絡していただければスタッフが適宜対応させていただきます
基本的には16時閉店でも、連絡してもらえれば場合によって対応可能であることを意味しています。
③マニュアルをお送りしましたので、適宜参考に作業を進めてみてください
作業の進捗や状況に合わせて、マニュアルを参考にしてほしいという意味になります。
「適宜」を使うときに注意すべきこと
例文で見てきたとおり、「適宜」はある程度相手の裁量に任せるときに使われる言葉です。
そのため、必ず守ってほしいスケジュールや様式がある場合に「適宜」のみで指示を出すと、相手に伝わらない可能性があります。
ゆえに自己判断で構わない、もしくは現場での判断が優先されるような事柄にのみ使うのがベターです。
また、相手から「適宜」を使われた場合も注意が必要です。
適宜でと指示されたからといって、まったく報告しなかったり相談しなかったりするのは、後のトラブルを引き起こす可能性があります。
熟知した仕事というわけではないのなら、ある程度は周囲や上司とコミュニケーションをとりつつ対応したほうがよいかもしれません。
適切な言葉を適宜使用してみよう!
ビジネスシーンで使われる言葉には似た用語が多いです。
そのため、何となく雰囲気で使っていたというケースも少なからずあるでしょう。
「適宜」は相手にある程度判断を任せてしまえるときに使われることの多い言葉ですが、類義語や似たような言葉とのニュアンスの違いには注意が必要です。
「適宜」の正しい意味を理解していれば、仕事の上でも然るべき指示が可能になるでしょう。
ぜひ適切な使い方で「適宜」を活用してみてくださいね。
- 「適宜」とは、その場の状況によって判断・対応することや状況に適していることを意味する
- ビジネスシーンでは主に「状況に応じる」「各自の判断」の意味で「適宜」が使われる
- 時間的なものや強制力、どこに焦点を合わせるかによって「適宜」や「適時」「必要に応じて」を使い分けるのがベター
- 「適宜」は本人に裁量を任せる意味合いが強いが、拡大解釈せずある程度周囲と相談・確認することも大事