ノンセクシャルとは?アセクシャルとの違いやノンセクシュアルの特徴・結婚観
近年、注目される機会が増えつつあるセクシュアルマイノリティですが、ノンセクシャルもそのひとつです。
ノンセクシャルとは、どのようなセクシュアリティを意味する言葉なのでしょうか。
今回の記事では、ノンセクシャルの定義とアセクシャルとの違い、ノンセクシュアルの特徴や結婚観について詳しく解説します。
ノンセクシャルとは?
セクシャルは英語のsexualをカタカナ表記にしたもので、性的なことを意味する言葉です。
否定のノンがついたノンセクシャルはどんな意味になるのでしょうか。
まずは、ノンセクシャルとは何か、言葉の意味を見てみましょう。
ノンセクシャルの定義
ノンセクシャルとは、他人に対して恋愛感情を抱くことはあっても、性的欲求は抱かないことやその人を意味する言葉です。
日本語では『非性愛者』と訳されることもあり、『ノンセク』という略語が使われることもあります。
そもそも『セクシャルマイノリティ』とは
ノンセクシュアルをはじめ、さまざまなセクシュアルマイノリティが注目を集めていますが、そもそもセクシャルマイノリティとは何なのでしょうか。
セクシャルは先述した通り、英語のsexualで『性的な』、マイノリティとは英語のminorityで、少数派という意味です。
つまり性的少数者の総称で、ノンセクシャルである非性愛者のほかに同性愛者や両性愛者、性同一性障害者などがこれにあたります。
セクシュアリティは何で決まる?
性別や性のあり方を意味するセクシュアリティは、どのような基準に基づいて決まるのでしょうか。
その判断基準は主に以下の4つといわれています。
- 生物学的性:染色体や性器など生まれ持った身体的特徴
- 性自認:自分自身が認識している性別
- 性的指向:自分がどの性を恋愛や性愛の対象としているか
- 性表現:言動や服装などで自己表現される社会的性
ノンセクシャルとアセクシャルの違い
ノンセクシャルによく似た言葉として、しばしば指摘されるのが『アセクシャル』です。
英語のasexualのカタカナ表記で、接頭辞のa-は『非~』『無~』を意味します。
ノンセクシャル同様、セクシャルを否定した言葉ですが、アセクシャルは『無性愛者』と訳されることもあります。
ノンセクシャルとアセクシャルの違いは、恋愛感情の有無です。
先述した通りノンセクシャルは恋愛感情を抱くことがありますが、性的欲求はありません。
これに対して、アセクシャルは恋愛感情も性的欲求も抱きません。
だからといって友情や家族愛がないわけではなく、愛情の中で恋愛と性愛がないのがアセクシャルなのです。
しかし定義としては、恋愛感情の有無を問わず性的欲求がないのがアセクシャルで、その中に恋愛感情を抱くノンセクシャルが属しているという説もあります。
アセクシャルのカテゴリ内に恋愛感情を持つノンセクシャルが属しているという考え方ですね。
いずれの定義においても、両者の違いは恋愛感情の有無と考えてよいでしょう。
ノンセクシャルの特徴
恋愛においてノンセクシャルだとどのようなことが起きるのでしょうか。
ここでは、ノンセクシャルの特徴について見ていきましょう。
恋愛関係での『当たり前』を疑問に思っている
現代はロマンティックラブイデオロギーといわれています。
これは、恋愛と性愛をひとつながりと捉える考え方で、恋愛結婚はその典型です。
現代人の多くがこれを当然と考え、好きな人と恋愛感情で結ばれ、子供を得て家族になりたいと考えています。
しかし、ノンセクシャルの人はこうした恋愛関係での「当たり前」を疑問に思っています。
彼らの恋愛は「好き」という感情で完結しており、性愛とは繋がっていません。
そのため、なぜ恋人だからといってハグしたりキスしたりしなければならないのか、わからないのです。
結婚を重要視していない
ロマンティックラブイデオロギーにおいて結婚はひとつのゴールですが、ノンセクシャルの人は結婚を重要視していません。
結婚適齢期が気になるのも妊娠出産が念頭にあるからで、何歳までに子供を持つならいくつまでには結婚しなければと考えるわけです。
しかし、そもそもノンセクシャルは性愛欲求がありませんから、妊娠出産は発生しません。
そのため、結婚を気にする必要がないのです。
性とは繋がりがない愛情を持っている
「好き」と言いつつハグもキスもしたがらないと、本当に好きなのかと疑問に思うかもしれません。
しかし、ノンセクシャルの場合、性とは繋がりがない愛情を持っていますから、スキンシップがないからといって愛していないわけではありません。
ただ、どれだけ想いが高まっても、スキンシップや性愛へと発展していくことがないのです。
触れ合うことに特別感はない
一般的にスキンシップやボディタッチがあると、より親密になれたと感じる人は少なくないでしょう。
しかし、ノンセクシャルにとって触れ合うことに特別感はありません。
ボディタッチしたところで肌が触れた以上の意味はなく、2人の距離が縮まったとは考えないのです。
異性にあまり関心がない
現代社会では恋愛と性愛は切っても切れない関係にあります。
特に男性は愛情と同じくらい性的欲求がゴールになってしまう人もいるでしょう。
しかし、ノンセクシャルの人はもともと性的欲求がありません。
そのため恋愛に対する執着が薄く、異性にあまり関心がないのも特徴といえます。
相手に求められることがツライと感じる
ノンセクシャルの人も恋をしないわけではありません。
しかしその恋愛観は他者と異なり、誰かと両想いになったときもスキンシップや性的関係を相手に求められることがツライと感じてしまいます。
多くの人にとって触れ合いはごく自然な愛情表現ですが、ノンセクシャルにとっては恋愛とは無縁のものです。
そのため相手に求められても簡単に拒否してしまい、相手を傷つけることもあります。
恋愛感情を抱いても踏み込めない
ノンセクシャルだと多くの人と恋愛観が違うため、恋愛感情を抱いても踏み込めないという人が少なくありません。
好きになった人がセクシャルマジョリティなら、相手の恋愛は性愛と繋がっているはずで、ノンセクシャルはそれを共有できません。
お互いすれ違う未来が見えているからこそ、それ以上踏み出せないのです。
罪悪感を抱くこともある
ノンセクシャルの恋愛観を理解した上での交際であっても、ノンセクシャルが罪悪感を抱くこともあります。
ノンセクシャルも相手が性的欲求を持っていることを十分に理解しています。
恋愛感情が募れば募るほどその思いは強くなるはずですが、ノンセクシャルの恋愛観を尊重すれば、欲求が満たされることはありません。
相手に我慢を強いる結果になってしまうことに自責の念を抱かずにはいられないのです。
接触を嫌悪してはおらず必要としていない
恋愛観の違いはあるものの、ノンセクシャルは肌の接触を必要としていないだけで、嫌悪しているわけではありません。
ハグやキス、性的関係といったものが恋愛感情と繋がっていないため、恋愛関係になっても自然と触れ合おうとは思わないのです。
しかしそのことを理解していなければ、ノンセクシャルにスキンシップを拒否されてショックを受けてしまうセクシャルマジョリティの人もいるでしょう。
特に愛情表現はデリケートで、「拒否=そこまで好きではない」と受け取る人が大半です。
誤解を避けるには、ノンセクシャルとは何かを理解しておく必要があります。
ノンセクシャルの結婚は?
純愛と性愛がひとつながりの時代において、結婚もまた性的欲求と無縁ではありません。
ノンセクシャルの結婚はどのような形のものが提案されているのでしょうか。
最後に、ノンセクシャルの結婚について見てみましょう。
パターン①恋愛結婚
ノンセクシャルは触れ合うことに嫌悪感があるというわけではありません。
恋愛関係に関連づけられないだけなので、セクシャルマジョリティの恋愛観を受け入れることで一般的な恋愛結婚もできます。
なかにはノンセクシャルと思っていた人が、異性との接点が増えることでそうではなかったことに気づくケースもあります。
そのため異性との触れ合いや性的関係に抵抗がないなら、まずは一般的な婚活をしてみた方がよいとする考えもあります。
マジョリティを結婚対象にできれば人数が多い分、自分に合った相手を見つけやすいというメリットもあります。
パターン②友情結婚
恋愛はしたいけど、愛情表現としてスキンシップや性行為をすることには抵抗があるノンセクシャルもいます。
その場合、推奨されるのが友情結婚です。
友情結婚とは性愛のない婚姻関係のことで、要するにノンセクシャル同士で行う性愛抜きの結婚ということになります。
ただし、この場合でも問題となるのは、友情結婚した後に実はノンセクシャルではなかったと判明するケースです。
そうした事態を避けるためにも、まずは一般的な婚活をしてみた方がよいかもしれません。
確実にノンセクシャルと確信が持てた段階で、友情結婚を検討した方が間違った選択を防げるでしょう。
ノンセクシャルというセクシャルをきちんと理解しよう
恋愛の入口はノンセクシャルでもマジョリティでも、さほど大きな違いはないでしょう。
しかし関係性が深まっても、ノンセクシャルの場合、スキンシップや性的関係の必要性を感じません。
そのため、パートナーに求められても拒否してしまい、相手を傷つけてしまうことも起きてきます。
また、恋人なら性的欲求に応じるのが当たり前と強要されると、ノンセクシャル側が辛い思いをすることになってしまうでしょう。
とはいえ、なかには異性との接点が少なかったために「自分はノンセクシャル」と思い込んでしまうケースもあるため、注意が必要です。
誤った選択を避けるためにも、ノンセクシャルというセクシャルをきちんと理解するよう心がけましょう。
- ノンセクシャルとは、他人に対して恋愛感情を抱くことはあっても性的欲求は抱かない人のことで「非性愛者」と訳されることもある
- セクシャリティが決まる4つの要因は、生まれ持った身体的特徴・分自身が認識している性別・自分がどの性を恋愛対象としているか・言動や服装などで自己表現される社会的性
- ノンセクシャルとアセクシュアルの違いは、ノンセクシャルは恋愛感情があるが性的欲求はないのに対し、アセクシュアルは恋愛感情も性的欲求もない
- ノンセクシャルの特徴は、恋愛関係での当たり前を疑問に思っている・結婚を重要視していない・性とは繋がりがない愛情を持っている・触れ合うことに特別感はない・異性にあまり関心がない・相手にも止められることがツライと感じる・恋愛感情を抱いても踏み込めない・罪悪感を抱くこともある・接触を嫌悪してはおらず必要としていない
- ノンセクシャルの結婚には、恋愛結婚と友情結婚の2つのパターンがある