愛とは何か?愛の哲学的分類や愛に関する名言10選を紹介
恋愛がうまくいかなかったり、誰も好きになれなかったりすると、「愛とはいったい何だろう?」と、つい考え込んでしまいますよね。
愛の意味がわからなくなった時、哲学や先人の言葉はきっと役に立つでしょう。
今回の記事では、愛の哲学的分類や愛に関する名言10選を紹介し、解説していきます。
愛の迷路に迷い込んだら、ぜひ参考にしてください。
そこには問題を解決するヒントが隠れているかもしれませんよ。
愛とは何か
そもそも愛とは何なのでしょうか。
普段何気なく使っている言葉ですが、改めて意味を考えてみると、すぐに答えが出てこないという人も少なくないでしょう。
その理由の一つとして、愛という感情にはさまざまな種類があるという点が挙げられます。
愛と聞くと、まず恋愛を思い浮かべるかもしれません。
しかし、恋愛に限らず、家族や友人、動物などを慈しみ、大切に思う気持ちはみな愛です。
人間愛という言葉もありますよね。
愛の対象は幅広く、また愛情の全てが好ましいものとは限りません。
盲目的に愛する溺愛も、むやみにほしがる貪愛も、愛であることに違いはないのです。
それでは、多くの人にとって望ましい愛とは何でしょうか。
それは、お互いが想い合い、与え合える愛でしょう。
愛の哲学的分類
愛にはさまざまな種類があり、4種類とも8種類ともいわれています。
分類の仕方もいろいろありますが、ここでは本質に着目した哲学的分類3種類を紹介します。
エロス
ギリシア語の「エロス」は本能に基づく愛で、一般的に性愛と訳されます。
日本ではエロスという言葉に、いやらしいイメージを抱く人も少なくないでしょう。
しかし、古代ギリシアの哲学者プラトンは、「エロスとは理想的な価値である真善美に憧れ、求める衝動である」としています。
また、見た目の美しさよりも精神の美しさを愛する方が優れているとも唱えており、精神的な恋愛がプラトニックラブと呼ばれるのは、そのためです。
プラトニックとはプラトン的という意味で、哲学的にはエロスはプラトニックラブと同じ分類にカテゴライズされているということになります。
もっとも、特定個人より美の本質を愛することがより優れているとも説いており、美の本質によって自らを充足させる愛がエロスといえるでしょう。
フィリア
「フィリア」は、友人に対して抱く愛情で、「友愛」「友情」と訳されることが多いです。
プラトンの弟子であるアリストテレスは、「幸福であるためにはお互いを思い合うことが必要であり、そうした愛情がフィリアである」と論じています。
フィリアには3つの種類があり、それが「有用性」「快楽」「善」です。
有用性のフィリアはその名の通り、利害関係にある相手に対する親愛の情で、仕事仲間や店と顧客の関係がこれにあたります。
快楽のフィリアは、一緒にいて楽しい相手に対する愛情です。
趣味仲間や飲み仲間などは、楽しいひと時を共有するために集まりますよね。
善のフィリアは、相手の人格を尊重するもので、真の友情と言っていいでしょう。
利益や快楽を必要としないだけに、「善のフィリアを育めるのは善人だけで、悪人は興味を示さないだろう」と、アリストテレスは言っています。
アガペー
「アガペー」は、他人を優先する自己犠牲的な愛のことです。
もともとはエロスやフィリア同様、古代ギリシャで使われていた言葉ですが、後にキリスト教の「神の愛」を表す言葉として使われるようになりました。
キリスト教における神の愛は、見返りを求めない「無償の愛」です。
人間誰でも愛されたい気持ちはありますが、「自分が愛されることを期待せず、相手のことを愛する気持ち」がアガペーといえるのかもしれません。
愛に関する名言10選
愛の意味がわからなくなったら、偉大な哲学者をはじめとする先人の教えをひも解いてみましょう。
ここでは、愛に関する名言10選を紹介します。
ぜひ参考にしてくださいね!
愛されることより愛することに愛は存在する
先に紹介した古代ギリシアの哲学者アリストテレスの言葉です。
紀元前という時代を生きた彼の言葉は、現代人の心にも深く響くことでしょう。
愛されたいと思っても、その願いが常に叶えられるとは限りません。
しかし、愛することは自分の気持ちひとつで、いつでも叶えられます。
愛を生み出すのは、いつだって自分自身であることを思い出させてくれる言葉です。
エロスは、よいものを永遠に自分のものにすることを求めているのだ。
古代ギリシアの三大哲学者といえば、プラトン、アリストテレス、そしてソクラテスです。
この言葉はプラトンの著作『饗宴』の中で、ソクラテスの言葉として出てきます。
「エロスとは、理想に憧れ、求める衝動である」と先述しましたが、だからこそ常に欠けている状態にあるのです。
『饗宴』の中には、男女はもともと2人で1つの存在だったのが、神によって切り離されてしまったという話も出てきます。
人は失った半身を見つけ、永遠に自分のものにするために恋をするのかもしれませんね。
人を愛したら賢いままでいることは不可能になる
こちらは、イギリスの哲学者フランシス・ベーコンの名言です。
誰かを愛する気持ちは止めようがありません。
愛は盲目と言いますが、普段ならしないようなことでも「愛する人のためなら!」と、つい愚かな真似をしてしまうこともあります。
変わらぬ愛とは一種の絶え間ない心変わりである
フランスの貴族であり文学者でもあるラ・ロシュフコーは、数多くの格言を残しています。
この言葉は少しわかりにくいかもしれませんが、恋人の好きなところが変わっていくことを「心変わり」と呼んでいるのです。
「見た目が好きで付き合い始めたら性格の良さに惚れ直した」という経験がある人もいるのではないでしょうか。
最初は顔に惹かれ、次は声、さらに性格もいいと、次々に心変わりしていけば、恋人への愛は生涯変わらないでしょう。
愛することによって失うものは何もない。しかし、愛することを怖がっていたら、何も得られない。
アメリカの心理学者バーバラ・デ・アンジェリスのこの言葉は、内気な恋人たちに勇気を与えてくれます。
「愛を求めながら愛されない」と嘆く人の多くは、愛することを恐れがちです。
しかし、失うものは何もないと気づけば、はじめの一歩を踏み出すこともできるのではないでしょうか。
愛とは信頼。人を愛するときは完全に信じることよ。
かの有名なハリウッド女優マリリン・モンローも、愛に関する名言を残しています。
好きだからこそ不安になってしまうものですが、信頼なくして愛は成立しません。
一度疑い始めると次から次へと根拠のない不安が湧いてきて、自分で自分を苦しめることにもなりかねないのです。
赤の他人の噂話や根拠のない不安に惑わされず、愛する人を完全に信じることが愛の極意といえるのかもしれませんね。
愛の反対は憎しみではなく無関心である
ノーベル平和賞を受賞した慈善事業家マザー・テレサのこの言葉に、新たな気づきを得る人も少なくないでしょう。
多くの人は愛の反対は憎しみだと考えますが、どちらも相手に対する関心であることに違いはありません。
たとえ嫌いな相手でも、対話し心を通わせれば、関心をポジティブなものに変えていくことができるでしょう。
しかし、無関心だと相手の存在は意識されなくなってしまいます。
たとえ、食べきれないほどの食事を持て余す人の隣に、飢えに苦しむ人がいても、気づかなければ助けようがありません。
相手に関心を持つことが愛の実践には必要であることを気づかせてくれる言葉です。
愛するということは、命がけだよ。
『走れメロス』『人間失格』などで知られる日本の作家、太宰治。
彼の愛に関する名言は『雌に就いて』という掌編の一節です。
2人の男が小説の筋を考えていると思いきや、最後に意外なオチが待っています。
軽い調子で語りながらも「愛するということは、命がけだよ」と言う男。
太宰治の生きざまと重ね合わせ、言葉の意味を深掘りしたくなる人も少なくないでしょう。
生涯をかけて貫く愛であれば、命がけといっていいかもしれませんね。
愛はお互いを見つめ合うことではなく、ともに同じ方向を見つめることである。
『星の王子様』で知られるフランスの作家サン=テグジュペリの愛の格言に、共感を覚える人も多いのではないでしょうか。
恋に落ちたばかりの頃は、お互い見つめ合うことが多いものです。
なかには、恋人以外は目に入らないという人もいるでしょう。
しかし、愛情が深まるにつれ、次第に2人は同じ未来を見つめるようになっていきます。
目が離せない特別な関係性から、そばにいて当たり前の存在となり、ともに同じ方向へ進む同士になってこそ、愛は成就するのかもしれません。
恋とは自分本位なもの、愛とは相手本位なもの。
日本のタレントであり、近年はスピリチュアルな活動にも精力的な美輪明宏氏のこの言葉は、愛の本質とは何かを教えてくれます。
恋とは相手に強く心惹かれて思いを寄せること、愛とは相手を慈しみ大切に思うこと。
恋は自分の気持ちに焦点が当たっているのに対し、愛の中心にあるのは相手の存在です。
恋から始まった関係でも思いが深まるにつれ、次第に相手本位の愛へと変わっていくことは少なくありません。
愛とは何かと悩んだら、自分の思いと向き合ってみましょう。
それは恋なのか、それとも愛なのか、見極めることができたら、きっと進むべき道がみつかるはずですよ。
愛には様々な定義があり人によって異なる
一口に愛といっても、恋人に対する愛もあれば、友達に対する愛もあります。
愛には様々な定義があり、人によって異なるのも確かです。
それだけに、時に愛が何かわからなくなってしまうこともありますが、そんな時は哲学的な分類や先人の言葉を思い返してみましょう。
きっと自分の愛にぴったりの意味を見つけることができるはずです。
もちろん、あらゆる定義はあくまで目安に過ぎないため、自分の気持ちを知る手がかり程度のものに留めておくことが大切といえます。
- 愛にはさまざまな種類があり、恋愛に限らず家族や友人、動物などを慈しみ、大切に思う気持ちはみな愛である
- 愛の哲学的分類は、「自らを充足させるエロス」「友人に対して抱くフィリア」「他人を優先する自己犠牲的なアガペー」
- 愛に関する名言には、「愛されることより愛することに愛は存在する」(アリストテレス)、「愛とは信頼。人を愛するときは完全に信じることよ」(マリリン・モンロー)、「恋とは自分本位なもの、愛とは相手本位なもの」(美輪明宏)などがある