寂しいと淋しいの違い!例文・読み方・使い分け方・どっちを使うか迷った時の対処法
「寂しい」と「淋しい」は、どちらも「さびしい」と入力すると出てくる言葉ですが、意味に違いはあるのでしょうか。
読み方も「さびしい」「さみしい」のどちらが正しいのか、悩みますよね。
この記事では「寂しい」と「淋しい」の違いや、読み方を解説しています。
また、それぞれの例文や使い分け方、どちらを使うか迷った時の対処法も紹介します。
Contents
寂しいと淋しいの意味とは?
「寂しい」と「淋しい」は全く違う字なのですが、どちらも心が満たされなくて不安な気持ちや孤独感、悲しみなどを感じさせます。
漢字が違うので言葉の由来は異なるはずなのに、同じような印象を受ける言葉になっているのは、なんだか不思議ですよね。
はじめに、これらの2つの言葉のそれぞれの意味の解説と、類語・言い換え表現を紹介します。
寂しいの意味
「寂しい」には、大きく分けて3つの意味、使い方があります。
1つ目は一緒にいてくれる存在がなく不安な気持ちや、周りに人や生き物がいないため心細い気持ちを表す表現です。
2つ目は「寂しい夜道」のように、人の気配や物音がない場所や状況、ひっそりとした雰囲気、または寒々しい様子を描写する表現方法です。
そして3つ目は「口が寂しかったのでお菓子を食べた」のように、何か不足しているため物足りなさを感じる心理を表します。
「寂しい」の言葉の由来は、心が荒れるという意味の「荒ぶ(さぶ)」「寂びる(さびる)」が今の形へと変化したものだと言われています。
淋しいの意味
「淋しい」の「淋」の字は、さんずいが使われていることから分かるように、水がしたたったり水を注いだりすることを表す漢字です。
「淋」の字そのものには、悲しみや辛い気持ちを表す意味はありませんが、日本語にはしたたり落ちる水は「涙雨」のように涙を連想させる表現がありますよね。
そのことから、涙がこぼれ落ちるようなせつない気持ちを表す感情表現として、深い悲しみや辛い気持ちを「淋しい」と表記するようになったのです。
ただし、現在公文書などで使用される常用漢字に入っているのは「寂」のみで「淋」は入っていません。
類語・言い換え表現
「寂しい」「淋しい」の類語や、意味が似ているので言い換え表現として使える言葉には、下記のような表現があります。
- 侘しい(わびしい)
周りに人がいないことから感じる物悲しい気持ちや、ひっそりとした雰囲気。
- うら寂しい、またはうら淋しい
なんとなく寂しい。こころ寂しいこと。
- 孤独
自分の周りに仲間や親しい人がいなくて、ひとりぼっちな状態や満たされない気持ち。
- 蕭索(しょうさく)
物寂しく、うらぶれた感じ。
- 寂寞(せきばく)
人の気配がなく寂しいさま。または満たされなくて物悲しい気分。
寂しいと淋しいの違いは?
「寂しい」と「淋しい」の違いには、物悲しさや侘しさの程度や、その時の状況の違いが反映されています。
また、対象によっても「寂しい」になるケースと「淋しい」と表現した方がしっくり来るケースがあります。
続いては「寂しい」と「淋しい」の違いについて解説しましょう。
「寂しい」は客観的な状況を表す
「寂しい」に使われている「寂」という字は、人気がなくシーンと静まり返った状態を表す漢字です。
そのような情景をイメージすると分かるように「寂しい」は自分だけが感じるような特別なシーンではなく、誰にとっても寂しさを感じられる客観的な状況を表しています。
「薄暗く寂しい森」や「誰もいない冬の寂しい海」などは、それまでの経緯を知らない人だけでなく、誰もが静寂や閑散とした雰囲気を感じるでしょう。
また「懐が寂しいので買い物を我慢する」のように、あるべき物やお金などが不足していて物足りなさを感じている状態の表現にも「寂しい」を使います。
「淋しい」は主観的な感情を表す
「淋しい」は、物寂しさや「せつなさ」など、感じている人の主観的な感情を強調している表現です。
孤独で心細さを感じている心境や、涙があふれてしまうような悲観的な気持ちを表現する場合には「淋しい」を使った方が、より鮮明に言葉のニュアンスが伝わります。
例えば、亡くなった人への思いや、本人だけが特別に感じている空虚な気持ちなどを表す際は「淋しい」を使うと、より深い悲しみが伝わるでしょう。
ただし基本的に「淋しい」が使えるのは心情に関する内容に関してだけとされており、状況や風景を表す表現には使われていません。
「寂しい」は心情を表すのに使ってもOK
「寂しい」の方は、風景や状況の描写だけではなく、喪失感や孤独感、物足りなさなどの心情を表す場合にも使うことができます。
「友達が引っ越したので寂しい」や「部長が転勤して寂しい」などの、日常会話の記述やメールなどに書く感情表現で使う場合は「寂しい」を使うのが一般的です。
「寂しい」は常用漢字に入っていますので、ビジネスレターやメールなどの公式な文書で使用しても問題ありません。
読み方はさみしい・さびしいどっちが正解?
「寂しい」「淋しい」は、どちらも「さみしい」「さびしい」の2通りの読み方がありますが、どちらの読み方でも正解です。
したがって、知人との日常会話などカジュアルなシーンでは、どちらの言い方をしても間違いではありません。
しかし、公文書やメディア記事など正式な文書では「さびしい」と読むことが一般的とされているため、ビジネスや公の席では「さびしい」を使った方がいいでしょう。
歴史的な話をすると「さみしい」と「さびしい」のうち、古くから使われていたのは「さびしい」の方です。
元々は「さぶし」と発音されていたのが、平安時代以降に「さびし」と形を変え、江戸時代からは「さみし」が併用して使われるようになりました。
【例文付き】寂しいと淋しいの使い分け方は?
文書を作成したりメールで感情表現したりする際に「寂しい」と「淋しい」をどのように使い分けたらいいのでしょうか。
基本的にどちらも同じような意味なので、どちらを使ってもあまり差はありません。
ですから、書き手の好みで使い分けられていることが多いです。
しかし、2つを使い分けることによって、伝えたいことがよりクリアに伝わる文章になることもあるので、使い分け方を覚えておくとよいでしょう。
次は「寂しい」と「淋しい」を使った例文を紹介します。
「寂しい」を使った例文一覧
「寂しい」を使った例文は、下記のとおりです。
- 一人の生活が寂しくて、ペットを飼うことにした。
- 早朝の寂しいバス停で、始発のバスを待っています。
- 今の職場に年が近い人がいないので、寂しいです。
- 彼氏に「寂しい」とLINEしたら、すぐ返事が来た。
- 表通りは人通りがありますが、一本中に入ると寂しい路地が続いています。
- 週末なのに何も予定がなくて寂しい。
- 襟元が寂しいからスカーフを巻いた方がいい。
「寂しい」を使う場合は、深い感情を述べるようなシーンというより、雑談として気軽に口にできるような内容が多いです。
また、人気がなくて閑散としている場所の様子の描写や、物足りなさを表現する場合も「寂しい」を使います。
「淋しい」を使った例文一覧
「淋しい」を使った例文には、以下のような表現があります。
- 知り合いが全くいない土地で暮らすのは、思っていた以上に淋しいです。
- 街で別れた恋人に似た人を見かけて、淋しい思いが込み上げてきた。
- 急に祖母を亡くして、淋しい暮らしを送る祖父が心配です。
- 彼は幼い頃に両親を亡くしたため、淋しい人生を送ってきました。
- 城跡に佇んでいると、時の流れを感じて淋しくなった。
これらの場合は「寂しい」より「淋しい」を使った方が、深い悲しみや孤独感が伝わります。
泣きたくなるような辛い心情や喪失感、または悲しみや虚しさを強く印象付けて、文学的な雰囲気やインパクトを持たせたい場合は「淋しい」を使うとよいでしょう。
寂しいと淋しいどっちを使うか迷ったら?
「寂しい」と「淋しい」のどちらを使うべきか迷った場合には「寂しい」にするのがおすすめ。
その理由は「寂しい」は常用漢字なので、ビジネスレターや仕事のメールで使っても安心だからです。
また「淋しい」が心情に関する表現なのに対し「寂しい」は感情の他にも状況や静けさ、物足りなさなどを表現できて、オールマイティーに使えます。
「淋しい」を「寂しい」と書いたら違和感がなくても「寂しい」を「淋しい」と書いたら不自然になる場合もあります。
もし「淋しい」を使う場合は、文書内で統一することを心がけ、表記ゆれにならないよう注意して使いましょう。
寂しいと淋しいで迷ったら「寂しい」を!ただし表記ゆれには注意して
「寂しい」は、あるべき存在がなく不安な気持ちや、物足りなさ、ひっそりとした状況などを表し「淋しい」は涙が流れるようなせつなく辛い心情を表現しています。
「寂しい」は客観的な状況または感情の描写なのに対し「淋しい」は主観的な感情の表現です。
読み方は「さびしい」でも「さみしい」でも正解ですが、ビジネスやメディアでは「さびしい」を使うのが一般的です。
「寂しい」は常用漢字に入っていて使用範囲も広いので、迷った時は「寂しい」を使いましょう。
心情を強調するため「淋しい」を使う場合は、表記ゆれに注意して使うようにしましょう。
- 「寂しい」は物足りなく満たされない気持ちや閑散とした状況を表す
- 「淋しい」は涙がこぼれそうなせつない気持ちなど、深い悲しみや喪失感を表す
- 違いは「寂しい」は客観的な状況の描写で「淋しい」は主観的な感情の表現
- 読み方は「さびしい」でも「さみしい」でもOKだが公式な文書は「さびしい」が一般的
- 寂しい・淋しいで迷ったら使用範囲が広い「寂しい」がおすすめ、ただし表記ゆれに注意しよう