「享受」の意味とは?正しい使い方を例文付きで解説!
日常会話ではほとんど使わないのに、ビジネスシーンでは当然のように出てくる単語は少なくありません。
「享受(きょうじゅ)」という単語も、そんな言葉の一つです。
取引先や目上の人との会話だけでなく、ビジネスメールやビジネスチャットでも「享受いたします」といった表現はよく使われます。
見たことはあるけれど、どんな意味なのか今ひとつピンとこないという人も多いのではないでしょうか。
そこで今回の記事では、「享受」の意味と正しい使い方について、例文とともに解説します。
Contents
享受の意味
「享受」とは、何かを受け取り、その恩恵や利益を自分のものとして楽しむことを意味する言葉です。
自然からの恩恵や利益となる情報、便利な事柄など、自分にとって好ましいものを受け入れて自分のものにするときに使われます。
「享」はあまり馴染みのない漢字ですが、訓読みは「うける」で、「受」と同じく何かを受け取ることを意味します。
ちなみに、自分にとって好ましくないものに対しては、一般的に「享受」を使うことはないので注意しましょう。
「享受」の正しい使い方【例文付き】
「享受」という言葉は、実際にどのように使えばよいのでしょうか。
ここでは、享受の正しい使い方について例文付きで解説します。
田舎暮らしをしていると自然の恵みを享受できる
「享受」は、目に見えるものだけでなく、自然の恵みのような非物質的なものに対しても使われます。
自然だけでなく、自由や幸福といった精神的なものも対象です。
『日本国憲法前文』にも「その福利は国民がこれを享受する」と記載されています。
福利とは幸福と利益のことで、どちらも目には見えない非物質的なものですよね。
科学技術の発展によりさまざまな恩恵が享受できるようになった
「享受」には、自分にとって好ましいものを受け取るといったニュアンスがあります。
科学技術の発展によってもたらされた利便性も好ましいものですから、「享受する」と表現することができるのです。
「享受させていただく」「ご享受ください」は誤用
「享受」は改まった席で使われることが多いため、仕事の取引先や目上の相手に使う場合、つい「享受させていただく」と言いたくなる人もいるでしょう。
しかし、これは誤りです。
「させていただく」は「させてもらう」の謙譲語ですが、「させてもらう」は相手に許可を得て何かを行なうことを意味します。
これに対し「享受」は自分の意思で恩恵を受け入れることですから、相手の許可を必要とする言葉ではありません。
そのため「享受」に「させていただく」をつけると、おかしな表現になってしまいます。
取引先や目上の相手に使う際には、「享受します」「享受いたします」を使いましょう。
また、「ご享受ください」も誤りです。
「ください」は尊敬語ではあるものの、相手に何かを要求する意味を持っています。
自分の意思で受け取り楽しむ「享受」を、相手に要求するのはおかしいですよね。
「有難く受け取って楽しんでください」と言っているようなもので、まるで押し売りのように聞こえてしまいます。
響きがよく似た言葉に「ご教授ください」「ご教示ください」があるため、混同してしまいがちですが、それぞれ意味は違います。
間違わないよう注意しましょう。
「享受」の類語
「享受」の言い換え表現にはどのようなものがあるでしょうか。
最後に「享受」の類語について見てみましょう。
拝受(はいじゅ)
「享受」の類語としてよく使われるのが「拝受」です。
「拝受」は「拝む」「受ける」といった漢字を見てもわかる通り、何かを受けることをへりくだって言う表現です。
取引先や目上の相手に対して「〜を拝受いたします」と使われることが多いでしょう。
「〜を拝受いたします」は一般的に浸透している表現ですが、「拝受」も「いたします」も謙譲語なので二重敬語となります。
より正しく使いたい場合は「〜を拝受しました」と表現しましょう。
受益(じゅえき)
「受益」は文字通り利益を受けることをいい、主に行政用語として契約書などに使われることが多い言葉です。
行政法では、国や地方公共団体の事業によって特別な利益を受ける人を「受益者」といいます。
比較的専門性が高い言葉なので、日常生活ではあまり見聞きする機会のない言葉かもしれませんね。
享楽(きょうらく)
「享受」が持つ「楽しむ」といったニュアンスに近い類語が「享楽」です。
思うがままに快楽を味わうという意味を持っていますが、必ずしもポジティブな意味で使われるわけではありません。
「享楽に耽る」「享楽に溺れる」などネガティブなニュアンスで使われることもあり、「酒や趣味などにうつつを抜かして人生を楽しむ」という意味合いが強い言葉です。
謳歌(おうか)
「謳歌」も「楽しむこと」に焦点を当てた類語の一つです。
与えられた幸せをみんなで大いに楽しみ喜ぶのが「謳歌」で、享受と異なり「受け取る」といったニュアンスはありません。
「人生を謳歌する」「青春を謳歌する」といった言い回しは、聞いたことがある人も多いでしょう。
「享受」の意味を理解して正しく使いこなそう!
社会人になると、その場に合った言葉遣いを求められることが多くなります。
改まった席でも困らないよう、普段から語彙を増やしておくよう心がけましょう。
「享受」も使い方さえマスターしておけば、便利に使える言葉です。
「享受」の意味を理解して正しく使いこなしていきましょう。
使い慣れない熟語は小難しく感じるかもしれませんが、コミュニケーション力アップにきっと役に立ちます。
言いたいことをうまく言葉にできない時は、日頃から辞書やサイトで検索し、自分の気持ちにぴったりな言葉を見つけておくといいでしょう。
話し上手を目指したいなら、類義語や関連語も押さえておくのがおすすめです。
宝探しのつもりで楽しく挑戦してくださいね。
- 「享受」の意味は、何かを受け取り、その恩恵や利益を自分のものとして楽しむこと
- 「享受」には、自分にとって好ましいものを受け取るニュアンスがあり、目に見えるものだけでなく、自然の恵みのような非物質的なものや、自由や幸福といった精神的なものに対しても使うことができる
- 「享受させていただく」「ご享受ください」は誤用
- 「享受」の類語には、拝受(はいじゅ)・受益(じゅえき)・享楽(きょうらく)・謳歌(おうか)などがある