色や形を感じる「共感覚」とは?共感覚の種類や身につける方法も紹介!
「共感覚」という言葉を知っていますか?
共感覚とは、1つの感覚に伴って他の感覚が働く現象のことです。
芸術的才能と関わりが深いとされ、芸術家などの著名人もこの能力を活かしていたのではないかと考えられています。
今回の記事では「共感覚」の特徴や種類、さらには共感覚を身につける方法について紹介していきます。
人によって違う!「共感覚」とは
「共感覚」といわれても、ピンと来ない人が多いかもしれません。
そこで、まずは共感覚の具体的な特徴について紹介していきます。
一部の人が持つ特殊な知覚現象
共感覚とは、刺激に対して一般的に知覚すること以外に、他の知覚も生じる現象を意味する言葉です。
英語では synesthesia(シナスタジア)といい、脳科学の研究者や神経科学者による研究分野の1つとしても扱われています。
具体的に説明すると共感覚のある人は、音楽を聴くと音だけでなく色を感じ取ったり、数字に色がついて見えたりなど、独特の知覚現象の中で生きています。
また、この共感覚は本人の意識にかかわらず無意識のうちに起こります。
このような「共感覚」を持つとされている人は10万人に1人ともいわれており、非常に珍しい存在とされてきました。
しかし、現在の進んだ研究では23人に1人という説もあり、自覚のないまま共感覚を有している人も多いかもしれません。
赤ちゃんのときは誰しも共感覚を持っていた可能性も
「文字に色なんて感じないし、自分と共感覚は関係ない」と思った人もいるでしょう。
しかし、生まれたばかりの頃は誰であっても「共感覚」を持っていた、という説を唱える研究者もいます。
ワシントン大学の心理学部教授のアンドルー・N・メルツォフは、生後1ヶ月の赤ちゃんを対象者として形(触感)の違う2種類のおしゃぶりを見えない状態で咥えさせ、その後それらのおしゃぶりを見せるという実験を行いました。
結果、赤ちゃんは自分の咥えていたおしゃぶりに注目したそうです。
見えていなかったはずのおしゃぶりを見分けている赤ちゃんは、触覚から視覚的判断が可能な「共感覚」を持っている可能性が高いと考えられます。
これは、赤ちゃん自身の脳がまだ未発達であり、五感の混線・共有状態が続いているためでしょう。
成長とともに感覚は分化されていくため、ほとんどの大人は共感覚を失ってしまいます。
しかし、何らかの理由で赤ちゃんの頃の共感覚が残った人が、いわゆる共感覚者になるのかもしれません。
また、幼い頃の「共感覚」はなくなってしまうわけではなく、無意識下に追いやられているだけ…という説もあります。
いずれにせよ、大人で「共感覚」を持つ人たちは稀な存在であるといえそうです。
自分が共感覚の持ち主だということに気づきにくい?
共感覚を持っているにもかかわらず、本人が気づいていないというパターンもあります。
共感覚を持つ人は、子どもの頃からその感覚の中で生きています。
文字に色を感じたり、音楽にニオイを感じたりするのは、共感覚を持たない人にとって信じがたいことですが、本人にとっては当たり前なことなのです。
生まれたときからの感覚ゆえに、自分の感覚が珍しいものであるとは気づきにくいのかもしれません。
数字、音楽、ニオイ…共感覚の種類
共感覚と呼ばれるものには、さまざまなパターンが存在します。
その種類は150以上ともいわれており、いくつもの共感覚を持つ人もいれば、1つだけという場合もあります。
続いては、代表的な共感覚の種類について紹介していきましょう。
色字共感覚
共感覚の代表として挙げられるのが「色字共感覚」です。
もっとも多いとされる共感覚で、色字共感覚のある人は文字や数字を見ると「1は黒、0は金色」など、何らかの色を感じます。
「国語は赤、数学は青」など、単語に色を感じるケースもあります。
この色は個人では一貫性を持っていますが、共感覚者の間では異なることも珍しくありません。
色聴共感覚
色字共感覚に次いで多いとされるのが「色聴(しきちょう)共感覚」です。
この場合は、音と色が結びついて感じられる現象のことを指します。
たとえば、「ドは赤、レは紫、ミは黄」と感じた場合、ドとミでは「赤+黄」になるので、和音になるとオレンジ色に感じることがあります。
また、色を感じやすい音や音楽は共感覚者によってさまざまですが、多くの共感覚者には高い音に明るい色を感じる傾向があるようです。
その他の共感覚
他には、以下のような共感覚があります。
- 「か行」にトゲトゲを感じる
- 曜日に色を感じる
- 痛みから色を感じる
- ニオイに音を感じる
- 肌ざわりに音を感じる
- 色に味を感じる
- 音に味を感じる
- カレンダーなどの数字列から空間配置を感じる
- ミラータッチ共感覚(他人が誰かに触られているのを、自分のことにように知覚する)
このような複数の感覚が重なって、独自の共感覚を持つ人も存在します。
共感覚のメリット
芸術家をはじめ、優れた才能を持つ人に多いとされる共感覚。
この感覚を持つ人には、以下のようなメリットがあると考えられます。
物事を記憶する手助けとなる
共感覚者は、2つの感覚を手がかりに記憶していることが多いようです。
たとえば、名前の文字に感じる色のイメージから人を覚えるなど、多面的な感覚で記憶を印象づけることができるので、物事が頭に残りやすいというメリットがあります。
学生ならば年号を色彩で覚えたり、暗算が得意だったりと、数字に関わる部分に役立っていることが多いです。
ゆえに、著名な数学者にも共感覚の持ち主が多いといわれています。
アーティスティックな才能につながる
芸術的才能のある人には共感覚者が多いです。
たとえば、モーツァルトやビリー・ジョエル、画家のムンク、そして日本でも『銀河鉄道の夜』の著者である宮沢賢治も共感覚を持っていたのではないかといわれています。
色彩やニオイ、音に満ち溢れた世界で生きる共感覚者は、その感覚を芸術的センスとして活かすことが可能というわけです。
自分の体験を絵にしたり、音楽作りの参考にしたりと、創作活動に役立たせることができます。
共感覚という独特の感性は、アーティスティックな才能と結びつきやすいといえるでしょう。
共感覚のデメリット
一方、共感覚の保有者は、少なからずデメリットを感じることもあるようです。
共感覚で覚えた情報が混同する
共感覚者独自の記憶力の良さが原因で、他の記憶の邪魔になることもあります。
たとえば、数字に関する記憶を色に頼っていた場合、同じような色の情報と混同してしまう場合があるのです。
同じ赤でも、青みがかった赤やオレンジ寄りの赤など、近い色は無限にありますよね。
ゆえに「色は出てくるけど、肝心の情報が思い出せない…」「青系だけど、どの青だったっけ?」なんてことも少なくありません。
違和感があると気になってしまう
共感覚者は、一般の人よりも聴覚や視覚が敏感な傾向があります。
ゆえに他の人にとっては何でもない文字列も、感じる色の組み合わせによっては「違和感のあるもの」として気になってしまうのです。
たとえば子供の共感覚者の場合、「計算の答えの色が気に入らないと、自分が落ち着く色の数字に変えてしまう」ということもあるそうです。
こうした違和感は他人とも共有しづらく、場合によっては「変なこだわりのある人」として変わり者認定されてしまう場合もあるでしょう。
共感覚を身につける方法
赤ちゃんの頃は誰もが持っていた可能性がある「共感覚」。
訓練すれば、あなたにも眠っていた共感覚がよみがえる可能性があります。
ここでは、人工的に共感覚を身につけるトレーニング方法を紹介していきます。
感じたことを別の感覚で置き換えてみる
音を聞いたら色を連想してみる、目の前の色を音に置き換えてみるなど、人工的に共感覚のような状態を作ることで、次第に本当の共感覚を目覚めさせることが期待できます。
食べ物や家具、絵画、外にあるものなど、身の周りのあらゆるものを使って共感覚の訓練をしてみてください。
感じる音や色は自由でかまいません。
慣れていけば、スムーズに共感覚が引き出せるようになるでしょう。
クラシック音楽を聴く
音楽は共感覚と馴染みやすいものです。
とくにクラシック音楽はメッセージ性が高く、色やニオイ、形などを想起させるのに向いています。
クラシックを聴くときは積極的にイメージを膨らませることで、自然と共感覚が磨かれていく可能性があります。
はじめはただぼーっと聴いているだけでもかまいません。
なにかしら映像が浮かんできたら、他に何が見えるか、どんな感じがするかなど、思いを馳せてみてください。
誰しも少なからず共感覚を持っている
「共感覚」というと、選ばれた特別な人間だけが持つというイメージがあるかもしれません。
しかし、共感覚は幼少期には誰もが持っていた可能性が高い感覚の1つです。
ゆえに今は共感覚がなくても、訓練次第で共感覚を持っている状態に近づけることができるかもしれません。
共感覚を身につけることができれば、クリエイティブな作業や感性の向上に役立てることができます。
また、共感覚は記憶力や知的活動の向上にも役立つ可能性もあります。
もしも共感覚に興味があるのなら、ぜひ普段の生活でさまざまな感覚を研ぎ澄ませてみてください。