強迫観念(強迫性障害)とは?意味や病気の原因・症状、克服する方法を解説
不快な考えやイメージが頭の中でしつこく浮かび、それを打ち消す行為を繰り返してしまうのは、ネガティブや個性の一言で片付けてはいけない症状です。
なぜなら、強迫性障害という心の病気にかかっている可能性があるからなのです。
そこで今回は強迫性障害と呼ばれる病気の原因・症状・克服方法について解説します。
強迫性障害の症状には『強迫観念』と『強迫行為』がありますが、この記事では『強迫観念』に重点を置いて解説をしていきます。
Contents
強迫観念(強迫性障害)の意味とは?
強迫性障害とは、『強い不安やこだわりが日常生活に支障をきたす病気』です。
例えば、次のような不安・こだわりを感じた経験のある人は多いのではないでしょうか。
- 玄関に施錠をしたか不安になって自宅に戻る
- ストーブの消し忘れが心配になって自宅に戻る
- 縁起にこだわってラッキーナンバーに関わるものを常に購入する
このような不安・こだわりを感じるのは人間として至って自然です。
しかし、その不安やこだわりが日常生活に支障をきたすほど度を超えている場合は、強迫性障害の可能性があります。
強迫性障害とは不安障害の一種であり、WHO(世界保健機関)の報告によると、生活上の機能障害をひきおこす10大疾患の一つに挙げられているのです。
上記の例において行動を示す「自宅に戻る」「購入する」が『強迫行為』、そして心の状態を示す「不安」「心配」「こだわる」が『強迫観念』になります。
強迫観念の類語
強迫観念の類語としては、次の言葉が挙げられます。
- 心配のしすぎ
- 不安視しすぎ
- 余計な心配
- 考えすぎ
強迫観念と表現すると、聞き慣れない人が多いでしょうが、類語で考えてみると誰にでも当てはまるような日常生活にある言葉なのがわかりますね。
つまり、会話の中で「考えすぎ」といわれた場合、度合いによっては強迫観念の可能性があり、さらに行動によっては強迫性障害の可能性もあるということになります。
強迫観念の症状
強迫観念の代表的な症状は以下の6つであり、認知タイプと運動性タイプに分けられます。
- 不潔恐怖と洗浄
細菌汚染の恐怖から過剰な手洗いをする、入浴や洗濯を繰り返す、不潔だと感じてドアノブに触れないなど - 加害恐怖
実際にそうではないと分かっているのに、他人に危害を加えたかもしれないと不安感にとらわれ、事件・事故のニュースを確認するなど - 確認行為
戸締まり・ガス栓・電気器具のスイッチが不安になり、指差ししたり触れたりして何度も過剰に確認するなど - 儀式行為
自分の決めた手順で物事を行なわないと恐ろしいことが起こると不安になり、仕事や家事を必ず同じ手順・方法で行う - 数字へのこだわり
不吉な数字、幸運な数字など縁起物に対して、度を超えたレベルのこだわりを持つ - 物の配置や対称性などへのこだわり
物を配置する時に一定のこだわりがあり、必ずそのとおりになっていないと不安になる
これら6つの中で、最も頻度が高いのは『不潔恐怖と洗浄』『加害恐怖』『確認行為』です。
そして、いずれの行為においても度を超えた不安・恐怖・こだわりの気持ちがあり、強迫観念はこのような心の症状を意味します。
強迫観念になってしまう原因とは?
現状、強迫観念になってしまう明確な原因は明らかにされていません。
「脳内での安全・汚染に関する認識に不具合が出ている」「脳の前頭葉などの血流に異常が生じていることが影響」などが原因という意見もありますが、あくまで仮説です。
ただ、「責任感が強い」「真面目な性格」「完璧主義」などに当てはまる人ほど強迫観念になりやすい傾向があります。
一説には幼少期に原因がある説も…
強迫観念になる原因の一説には、幼少期の過ごし方と関連性があるという説もあります。
母親と父親がケンカばかりしていると、子供もケンカしやすい性格の子供になり、これは子供の脳が親の言動を無意識に模倣しているのが理由と考える人がいるのです。
この考えと同様に、「強迫観念のある親に育てられた子供は模倣によって強迫観念になりやすい」説が浮上しています。
しかし、あくまでこちらの説も仮説に過ぎないでしょう。
強迫観念は治るの?3つの克服する方法
強迫観念は強迫性障害の症状の一つですから、克服するには強迫性障害を治す必要があります。
もっとも、強迫性障害の治療をめぐる状況は以前に比べて大きく前進しており、適切な治療を行うことで回復が期待できるようになってきているのです。
治療方法として以下の有効性の高い3つの方法が挙げられますが、実際の治療は専門医の指導のもとで時間をかけて行っていきます。
そのため自己判断で決めるのではなく、まずは精神科や心療内科などを受診して正しい診断を受けましょう。
薬で治療する
薬物療法で主に使われるのは、抗うつ薬であるSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)で、これはうつ病(大うつ病性障害)などの治療でも使用される薬です。
SSRIには、脳の中の神経伝達物質の一つであるセロトニンの量を調節する効果があり、早い人だと服用して2~3週間で症状軽減の反応があらわれます。
一方で、反応があらわれるまでもっと時間がかかる人もいますし、さらに効果の出る服用量も人によって違うため、様子を見ながら少しずつ調整していくことになります。
そのため、自己判断で服薬を中止してはならず、主治医の指示に従って服薬を続けていくことが大切です。
薬物療法で気になるのは副作用ですが、SSRIの場合は比較的副作用が少ないといわれています。
しかし、中には吐き気・口の渇き・便秘・下痢などの副作用が出る人もいるため、身体に変化が起こった場合は必ず主治医に相談しましょう。
曝露反応妨害法(行動療法)
曝露反応妨害法とは認知行動療法の一つであり、『暴露』に対して『反応妨害』を行うという心理学を用いた治療法です。
まず、曝露によってこれまで自分が怖れて避けていた状況に敢えて自分を晒します。次に、反応妨害によってこれまで不安を打ち消すために行ってきた強迫行為を控えます。
つまり、意図的に強迫観念を呼び出した上で強迫行為に至る反応性を抑え、強迫行為をしなくても不安を解消できることを実感させるのです。
当然、最初の段階では不安が強くなりますが、繰り返すことで強迫行為の必要性がないことが分かり、不安も解消されて強迫性障害を克服できます。
薬物療法は全国どこでも受けられる治療法ですが、曝露反応妨害法は強迫性障害を熟知した治療者がいることが治療を受ける上での前提です。
これは、曝露反応妨害法…すなわち認知行動療法がまだ新しい治療法であることが理由であり、希望する場合は医療機関に問い合わせる必要があります。
自分を理解し無理のない生活を送る
強迫性障害は、強迫観念から起こる強迫行為によって起こる病気であり、この仕組みに当てはまらない生活を送ることが再発・悪化の予防につながります。
例えば、ストレスや不安を感じた時に焦って解消しようとすれば、「強迫観念→強迫行為」の悪循環に陥ってしまいます。
この場合、ストレスも不安も時間の経過で軽減されるため、無理なく立ち止まって休憩する生活を送るのが強迫性障害の対処として効果的です。
強迫性障害は
- 真面目で融通がききにくい人
- 一つのことを徹底的に追求する完璧主義な人
- 正確性を求め少しのズレも許せない人
がなりやすい病気です。
そのため、これらの特徴に該当する人はそれを『自分の個性』と捉えて理解し、無理のない生活を送るように心掛けましょう。
自分の個性を知っておけばストレス回避しやすくなり、無理のない生活を送ることで強迫性障害の再発・悪化を防ぎやすくなります。
強迫観念を克服するための2つの本
チック障害・双極性障害・身体醜形障害といった、精神疾患・精神障害を引き起こしてしまい一人で悩んでいる人は世の中に多数存在します。
また、強迫観念を起こす強迫性障害の場合も同様に、一人で抱え込み悩んでいる人が多いです。
しかし、そのまま悩み続けても何も状況は変わらず、むしろ悪化してしまう可能性が高まってしまうでしょう。
そこで強迫観念を克服するのにおすすめの本を2冊紹介するので、参考までに一読することをおすすめします。
家族と取り組む強迫性障害克服ワークブック
出典元:
https://www.amazon.co.jp/%E5%AE%B6%E6%97%8F%E3%81%A8%E5%8F%96%E3%82%8A%E7%B5%84%E3%82%80%E5%BC%B7%E8%BF%AB%E6%80%A7%E9%9A%9C%E5%AE%B3%E5%85%8B%E6%9C%8D%E3%83%AF%E3%83%BC%E3%82%AF%E3%83%96%E3%83%83%E3%82%AF-%E3%82%AB%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%83%BBJ%E3%83%BB%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%BA%E3%83%9E%E3%83%B3/dp/4791109538
自分だけで苦痛を抱え込み、社会から孤立してしまうのがOCD患者の陥りやすい罠。克服には、家族や協力者全員で正しい知識を持って戦わなければなりません。
この本は自分の大切な人をOCDから守るため、認知行動療法に基づいて家族の相互関係におけるパターンとその機能の理解を深められる実践ワークブックです。
実体験に基づく強迫性障害克服の鉄則
出典元:
https://www.amazon.co.jp/%E5%AE%9F%E4%BD%93%E9%A8%93%E3%81%AB%E5%9F%BA%E3%81%A5%E3%81%8F%E5%BC%B7%E8%BF%AB%E6%80%A7%E9%9A%9C%E5%AE%B3%E5%85%8B%E6%9C%8D%E3%81%AE%E9%89%84%E5%89%87-%E5%A2%97%E8%A3%9C%E6%94%B9%E8%A8%82-%E7%94%B0%E6%9D%91-%E6%B5%A9%E4%BA%8C/dp/4791108809
医師や薬に頼ることなく、強迫性障害の克服を目指すための本です。
この本の著者自身、長年にわたって強迫性障害に苦しみ続け、そして克服しました。
その実体験を元に、強迫性障害との付き合い方や克服の仕方を40の鉄則にまとめており、WEB上でも相談室を開設しています。
強迫観念の治し方は、ゆっくり向き合うのが一番!
強迫観念によって日常生活に支障をきたす症状が起こっている場合、早く治したい気持ちが強くなりがちです。
しかし、強迫観念の不安な気持ちは抗不安薬で簡単におさまるものではないですし、合理性を考えた治療を行っても、すぐに結果が出るものではありません。
強迫観念を治すにはまず病気と向き合うことが大切で、ゆっくりと焦らず治していけば、少しずつ症状も改善されていくでしょう。