「おこがましい」の意味|正しい使い方や例文、使うときの注意点を解説
「おこがましい」という日本語は、よく耳にするわりに説明の難しい言葉です。
人を非難するときに使うこともあれば敬語表現としても使用されるなど、ニュアンスの異なる使い方に迷ってしまうことも少なくないでしょう。
今回の記事では、そんな「おこがましい」の正しい使い方や使うときの注意点について解説していきます。
Contents
「おこがましい」の意味とは?
まずは「おこがましい」の正しい意味について知っておきましょう。
「おこがましい」という言葉の語源は、古代中国の時代に川辺の周辺に集まるうるさい人たちを「水辺のカラス」に例えたことがはじまりだと言われています。
漢字では、カラスの意味を持つ「鳥」と水辺を表す「滸」を使って「烏滸がましい」と書くのが一般的です。
日本の古文の中でも「をこがまし」という言い回しが存在し、かなり古くから使われてきた言葉だといえます。
かつては「馬鹿げている」「みっともない」という意味が主流でしたが、現代ではさらに「(身分不相応な言動に対し)生意気である」「差し出がましい」といったニュアンスで使われることも多いです。
この、「身の程しらずで差し出がましい」といった使い方には、単純に相手を非難するパターンの他に、謙遜するために本人が使うことも可能です。
「おこがましい」の類語
「おこがましい」の類語表現としては以下のものが挙げられます。
- 厚かましい
- 差し出がましい
- ぶしつけな
- 生意気な
- 身の程知らず
いずれも他人を指し示す場合は非難の意味合いが強く、自ら使う場合はへりくだりのニュアンスが強いといえるでしょう。
また、同じ類語でも
- 僭越ながら
- はばかりながら
こちらの場合は、自分を指して「出過ぎた真似かもしれませんが…」とへりくだるシーンでのみ使われることが多いです。
「おこがましい」の使い方・例文
続いては、「おこがましい」の使い方を具体的な例文付きで解説していきます。
「おこがましい」の使い方に迷ってしまう人は、ぜひ参考にしてみてください。
上司や目上の人に意見する「おこがましい」
「おこがましい」は上司や目上の人など、立場が上の存在に意見するときに使うことができます。
<例文>
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上の立場の人にストレートに意見するのは難しいものです。
しかし、自分自身の発言を「おこがましい」と前置きすることで、謙虚なイメージを与えたまま自分の見識を述べることが可能になるでしょう。
仕事の依頼やお願いする「おこがましい」
仕事の依頼や他人にお願いする場合も「おこがましい」は便利です。
<例文>
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とくに取引先相手や上司の場合、ストレートに依頼することは失礼に当たります。
「おこがましいお願い・依頼内容である」ということをあらかじめ言っておけば、相手を慮っているという気持ちも同時に伝えることができ、受け入れてもらいやすくなるでしょう。
ビジネスメールなどでも使いやすい表現の1つです。
自分の身内に対して使う「おこがましい」
自分の身内に対しても「おこがましい」を使うことができます。
<例文>
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日本は謙虚さを美徳とする文化が根強いため、身内を大っぴらに褒める人は少ないです。
もしも身内を褒める場合は、「自分の立場で褒めるのは厚かましい、みっともない」という意味を含んだ「おこがましい」を使うことで適度なクッション言葉となります。
つまり、ここでの「おこがましい」は、身内を褒めることの恥ずかしさを自覚しているという表明でもあるのです。
感謝の気持ちを伝える「おこがましい」
目上の人に感謝の気持ちを伝える場合、「おこがましい」を使うことでよりありがとうの気持ちが伝わりやすくなります。
<例文>
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おこがましい、つまり厚かましい要請であったと自ら伝えることで、そんな面倒事に対処してくれた有難さを強調することができるでしょう。
「おこがましい」と言われたときの返答
「おこがましい」は、自分に使う場合はとくに問題はありません。
しかし、他人から「おこがましい」と言われたときは要注意です。
他人から「おこがましい意見かもしれませんが…」などと言われた場合、そのまま流してしまうと「本当に厚かましいと思われているのかも」とあまりいい印象を与えません。
もし「おこがましい」を使われたら、「気にしないでください」「そんなことありませんよ」と、さりげなくフォローすることでよりスムーズな関係性を築くことができるはずです。
「おこがましい」を使うときの注意点
最後に「おこがましい」を使うときの注意点を紹介していきます。
自分をへりくだって言うときに使う
「おこがましい」を使うときは、基本的に自分をへりくだって言うときに限定するのがベターです。
相手を非難する際に使うのも間違いではありませんが、実際はかなり強い否定的なニュアンスを含みます。
「お前は生意気だ」「出過ぎた真似をするヤツだ」と言っているのと変わらないので、ビジネスシーンやとくに目上の人相手には絶対使わないほうが良いでしょう。
目上の人間が目下の相手に使うと嫌味っぽくなる
へりくだりの「おこがましい」は目下の人間が目上の相手に使うものです。
しかし、目上に当たる人が「私が言うのもおこがましいかもしれないが…」と意見してしまうと、謙遜というより嫌味のニュアンスが強くなってしまうでしょう。
丁寧に言ったつもりでも嫌味に聞こえてしまうので、目下の相手にはストレートな言い回しをすることをおすすめします。
人の言動に使うときは相手を選ぶ
もし、人の言動に「おこがましい」を使う場合は注意が必要です。
例えば、部下が取引先相手に失礼な言動をしたときに「おこがましい言い方は控えなさい」と注意するのはOKでしょう。
しかし、逆に上司に対して「おこがましくないですか?」と指摘するのは失礼に当たります。
自分が上の立場である場合を除き、他人に「おこがましい」と意見するのは避けたほうが良いかもしれません。
「おこがましい」を使うときは失礼のないように配慮することが大切!
「おこがましい」は汎用性が高く、ビジネス敬語としても活用しやすい言葉です。
しかし、自分に使う場合と相手の言動に使う場合では、ニュアンスが全く異なる点には注意が必要です。
目上の立場の人が「おこがましいかも…」とへりくだると、かえって嫌味な印象を与えてしまいます。
また、上司やさほど親しくない相手に「おこがましいですよ」と指摘するのも避けたほうが良いでしょう。
「おこがましい」の用法を熟知したうえで、適切な使い方を心がけてくださいね。
- 「おこがましい」とは、馬鹿げている、差し出がましいといった意味を持つ言葉
- 「おこがましい」には、目上の相手に対して控えめ・謙遜のニュアンスで使う場合、自分や身内をへりくだって使う場合など、さまざまな用法が存在する
- 「おこがましい」は基本的に自分をへりくだるときに使うのがベター。自分の立場や相手との関係性によってはふさわしくない言葉になるため、使い方に注意しよう